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評価:
新城 カズマ
集英社
¥ 670
(2009-09)
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<17>と名乗る人物と、完璧な場所で自殺をすることにした主人公の徳永準。
遺書として送るつもりだった書きかけのメールを、ひょんなことから自殺前に送信され
それが、友人やら無関係な人間に回り回って気付くと、
各自の勝手な思惑により徳永準の<捜索隊>が結成され、都心部に居るだろう
徳永準の自殺を阻止すべく、大晦日の東京を右往左往するのが本作。
ちなみにタイトルは、「イチゴーニイヨン」と読みます。
全6巻を読み終えての感想ですが、非常に面白かった。
リリースはラノベとしてですが、これは、普通にハードカバーで売られてもおかしくない。
むしろ、その方が良かったんじゃないの?とも思う。
その方が、年齢層高めの人達にも目に付いたんじゃないかな?と思う。
それに、後述するようなイベントに参加するであろう人間の年齢層を考えると
ラノベとしてリリースしたことが本当に正解だったのか?とは思います。
だけど、読んで欲しいであろう対象者はきっとティーンエイジャーなので
そうだとするとラノベリリースは正解だが、そうなるとイベントはそのティーンを
置いてきぼりにしているような感じもして、ちょっとちぐはぐ感が。
閑話休題。
読んでいくと、「なんで死んだらダメなのか」「生きるとは、死ぬとは」といったことが
常に頭を過ぎり、時時そういった命題にぶつかりつつも、登場人物達の時間軸に沿った
細かい切り替えにより、話はかなりテンポ良く進みます。
そのため、非常に重く、結論が出ないテーマをデカデカと掲げながら
それに拘泥することなく話は、二転三転どころか最後までひたすら転がり続けます。
link one(いわゆる1巻)を読み上げた段階では、案外あっさりと話が終るかな?と思いました。
だけど、link twoからは一気に展開の速度と、予想外の方向に話が流れ
捜索対象である徳永準や、その捜索隊を含め、かなり引っかき回されます。
よくもまぁ、ここまで入り組んだ展開を考えた物だとハッキリ言って感心するしかない。
個人的には、新城十馬時代の「蓬莱学園シリーズ」が至極の作品だと思っているため
本作も、蓬莱学園的な多方面で同時多発的にドタバタが起きるのを6冊にわたって
行っているため、読んでいて楽しくないわけがなかったのでした。
15人の24時間が、どのようにしてすぎていくのかは、ハッキリ言って予想を裏切り続けます。
個人的には、早い段階で<17>の正体には気付きましたが、
理由付けというか、こういうことを仕組んだ理由というか伏線に気付かずショックでした。
そういう、犯人を捜せ!ではないですが、ミステリー的要素も多く
そして、都市伝説であったり、ファンタジー的な要素であったりが散りばめられており
単純なジュブナイルや、ラノベではないです。
ですが、link sixはちょっとそういう要素が前の5冊に比べて多かったために
読み終えてすぐは、「ちょっとなぁ〜食傷気味」と正直思っていました。
ですが、読み終えて1日経ってみると、不思議の国的なモノがなくて、
リアル一辺倒だったらここまで面白くならなかったことがしっかりと理解でき、
そして、そういったものが存在するからこそ成立する話だったとつかみ取れました。
それは、あとがきを読めば確かにそうだと思うのですが、1巻ではなく「link one」であることや
6冊でひとつの絵が完成する表紙において、登場神仏達が腕を組んだり手を繋いだりして
繋がっているあたりとか、そういったことを含め、全てがリンクしている、繋がっているんだ!
と読み終えた後だからこそ、見えてくる新たな面白さをいま感じているところでして
これは、もう一度通読し、そうすることで新たな感想が得られる、そんな気がしております。
そして、本作ですが、前出したように09/12/31にイベントが繰り広げられます。
と上記のようなイベントが開催されるのですが、セカイカメラっていえばiPhoneじゃないですか
それを使いつつ、イベントに参加出来る中高生ってそんなに居るかな−?
どちらかといえば、中高生より、中高年じゃねーの?と思ったりするので
そこは、狙った読者層と、このイベントのターゲット層に乖離があるような気がします。
そして、都内にいない俺にしたら、そもそも参加不可能(笑)
だけど、協力者として参加することは出来るようでして、Twitter上で
上記のアカウントを含め、いくつか15x24関係のアカウントをフォロー中。
これって、現代のPBM(Play By Mail)だよなぁー
ちなみに、Play By Mailっていうのは、プレイヤーがメール(手紙)をゲームマスターに送り、
それを読んだゲームマスターが各人の行動を総合してプレイヤーに手紙を返信し、
それに対してまたプレイヤーが反応し… という遊びです。
現在では信じられないかも知れないけど、そういう遊びが存在していたのです。
テーブルトークRPGはまだ生きているけど、リアルPBMなんて絶滅しただろうしなぁ
強いてあげるなら、Civilizationシリーズでのメール対戦にその面影を感じるくらいか。
また、話が逸れた。
ということで、年内に読み切って、いや、読んでなくても大丈夫ですから
参加出来そうな人は、本イベントに参加するべきだと思います。
こんな、ゼロ年代最後、まだまだ面白いことは沢山ありますよ!